朝のアトリエ
今朝のマルシェより
朝 一番乗りの誰もいないアトリエが好き。
窓は毎朝全開にされているので空気は冷たい。
正確には一人ではなく一足先に到着している師匠がいるわけなんだが・・
私はまず 彼女のオフィスの前に行き 一言 朝の挨拶をしてから、(道具やデスクをアルコール消毒しまくりw) 一人で静かに作業を始める。
彼女は 毎朝 道具の手入れから始めるので、シャィシャィ、スイスイ とその聞こえてくる音が心地いい。
手入れが終わると次に 結構な音量で朝のラジオを聴きだす。決まった時間に始まる毎日の同じプログラムだ。
ラジオを聴きながら「bah〜 oui(そりゃそうだろ)」とか「ピュターン!(Fワード)」とか「C'est pas vrai...(うそでしょ)」とか「Incroyable ! (信じらんない)」とか、ラジオの話にいちいち反応する。
毎回ほとんど同じような応答しているところが 70に近い典型的なこの年齢の仏人だと思う。ラジオの内容と彼女の反応を背中で聞いていると、そう反応するかw・・なんてことがあって またこれが結構面白いんだわ。
これを始めた時はロックダウン中でバスがガラ空きだったのだが、通常に戻った後の混み具合がいやで、ガラ空きのバスをめざして早く行き始めたんだけど、今は このみんながくる前の50分程度の静かな時間、これが本当に好きだ。
そしてなんとなく そう思うのだが、朝一番のりでアトリエに入ると「その日、アトリエを制する人」みたいな気分と雰囲気になるのだ。(「制する」はちょっと違うのだがうまく言えない)
そうこうしていると師匠がアトリエに入ってきて話が始まる。これもいつものこと。
それは普段のたわいない出来事から、離れて住んでいる彼女のお孫さん達の話だったり、昔の彼女の厳しい師匠の話だったり、なかなか上達しないテクニックのヒントだったり・・
とにかくリッチな この朝の1時間が非常に気に入っている。
師匠が「土曜日に一人で作業するけど見にくるか?」と誘ってくれたので行ってきた。
一緒にコーヒーを飲みながら創造の世界の1ページをみせてくれた。
そして作り出す作業にかかる。彼女の手がマジックすぎる。
「バゲット マジック(魔法のバトン)はこの様に使うのよ オッホホホ・・」
(baguette はパンの呼び名だけでなく、一般的には「細長い棒のようなもの」の意味、だから「お箸」もバゲット、ただお箸は2本でワンセットだから baguettesと複数形になる。ただし末尾にくる子音は「ほとんど」発音しない場合が多いので聞こえてくる音はパンと同じ バゲット・・ 気をつけて〜w)
昨日はそのリッチな時間が一日中だった。
最初に時計をみたらランチ、次に見た時は「さぁ もう帰りましょう」の声だった。
帰り際に「この頃ようやく 基本中の基本ができるようになったわねェ」と一言
あまりにも濃すぎた1日の反動で帰りのバスではシートに沈んだ。
雨で窓が曇って 外が何も見えないバスの中で音楽を聴きながら キャップを深くかぶってシートに埋もれていたら気がついた。
うちの祖父も 父も 職人だったではないか、
そして小さい頃の私の遊び場はアトリエだったよねぇ。
どうりで気持ちいいはず・・・そして 血は争えないってことかw。
コロナがなかったらこの方向は絶対なかったと思うけど、なんだか思いがけないことになってきた模様。